siNger
視界に入っていたはずの彼の手が消えた。
次に視界に入ってきたのは,彼の胸の部分だった。
さっき視界に入っていた手は,もう一方の手と一緒に私の背中に回っていた。
私は抱きしめられていた。
私は持っていた傘を落としていた。
カケルくんも傘を落としていた。
道路だよ??
ミンナ見てるよ??
「ぬ・・・濡れちゃうよ!?カケルくん!!!」
「ぬらさねーよ。春美だけは。」
ドクン
心臓・・・とびでちゃいそう・・・
「あっついなぁ。お前の体温。」
「だ・・だって熱あるもん!!」
「前も思ったんだ。」
「?!」
「体育館で抱きしめちゃったとき。コイツあったけぇなぁって思った。」
ドキドキドキドキ
「放したくねーって思った。」