12ホール
「まぁ…キチンと治してくれるなら今回だけは許す」
「本当か?」
嬉しそうな声で諳が言う。
「ああ…その代わり…俺は麻幌に仕えてるんだ…何かでまた傷付く事があったら助けろよ?」
「本当にそれだけで良いのか?」
驚いた表情で諳が亥月を見上げる。
「?ああ…他に何がある?」
諳は少し言い難くそうに答える。
「…血を寄越せ…胎児を…」
「もう良い!!」
麻幌が声を荒げる。
「麻幌様…ここは病院ですから、お静かに…」
麻幌に驚いた諳を庇う様に五月女が言う
。
「ああ…そうだよな…ごめん…」
諳は首を横に振った。
「さぁ…諳ちゃんも病室に帰りましょうか…」
「…そうする…」
まだ怯えた表情のまま諳は五月女に付き添われて病室を後にした。
「蛟(みずち)の主?」
亥月が呟く。
「…今まで…何処に…」
「胎児を…って…」
「…うるさい!」
「だけど…麻幌…」
あり得ない位に冷たい目をした麻幌を亥月は見上げた。