12ホール
第二章 瓢。
「折角…治したのに…」
「だからだろ…ほら、キョロキョロするな…」
諳に傷を治癒して貰った亥月が不器用そうに諳をエスコートする。
「麻幌の生家に行くんだろ?麻幌は?」
「どうしても取らなきゃならない講義があるからな…週末には会えるよ」
グリーン車両に諳を座らせる。
「亥月は良いのか?あの場所が大学なんでしょ?」
「…まぁ…良くはないけど…いきなり完治して…ってのも変だからな」
亥月は実家での療養を理由に数週間の休学届を提出した。
「五月女は?」
亥月と二人なのが不安なのか?
次は五月女の事を問う。
「諳の住む場所の手続きとかと、俺の転院手続きだよ…心配しなくても大丈夫だからな?」
人形であった両親を消した諳は、遠縁の五月女に引き取られる…と言う記憶の改竄を麻幌と施した。
「…そうか…ありがとう…」
初めて見せる子供らしい諳の安堵の表情に亥月は顔を赤らめる。
「それは俺じゃなくて、麻幌と母さんに…それから…諳を呼んでくれた紡衣様に言えよ…」
麻幌や、話を聞いた紡衣ですら狼狽した蛟の主の諳にも対等に接する。
「そうか…」