12ホール
先ず二人が通されたのは、玄関に隣接する部屋だった。
ソファーと暖炉だけがある殺風景な部屋で、諳は暖炉を珍しそうに覗き込む。
「亥月…これが暖炉か?この屋敷には煙突があるのか?」
「煙突?ああ…あるな」
「ここからサンタクロースが来るのか?今まで私の所に来なかったのは暖炉が無かったからか…」
「…まぁ…そうかな?」
答えを口籠る亥月の後ろで別の声がする。
「今年は必ず来ると思いますよ」
亥月と諳が振り返った声の主は、紡衣だ。
「紡衣様…」
相変わらずなオーラを纏った紡衣に亥月が構える。
「これが麻幌の兄様か?」
「そうです…諳様」
諳の前で跪き、手を取る。
「…目が似ている…」
「ありがとうございます…こちらの部屋へ」
二人は衣を翻す紡衣の案内で移動する。