12ホール
「はいはい…今あげるから…」
お気に入りのパンツを毛だらけにしながら亥月が足元に擦り寄る二匹の猫に話しかける。
「まったく…」
麻幌が紡衣の元に帰り三日が経つ朝の大学構内。
いつも通り、自分が庇護する猫と麻幌の猫にエサを与えていた。
「すっかりお前も懐いたな…」
黒子に話しかけ、背中を撫でる。
その声に返事をするかの様に、黒子がエサから顔を上げ亥月を見上げた。
「何だ?どうし…」
次の瞬間、二匹の猫は飛び退いた。
そして、二匹が居た場所には肩を血に染めた亥月が倒れた。
「…なーんだ…人間なんだ?」
そう呟くと軽い足音が遠ざかる。