桃色の初恋〈上〉

夢が初めて私に怒鳴った。
夢は正直に怒ってくれた。


「...ごめん」

『そうだよね。きっとあたし、愁の優し
 さに心地よさを覚えて浸ってただけな
 んだね...』

「じゃあ、翼君の方が好きなの?」

『わからない。でも、愁と付き合ってても
 きっとすぐに別れが来る。あたしさ、
 背中に傷があるの。』

「んで?」

『根性焼き。私の体は汚れてるから、一生
 愁に見せられないし、抱いてもらえない。
 ...昔、矢崎につけられたの』

「知ってるよ。」

『なんで?』

「昔、修学旅行の時、隠れて背中になんか
 してたからさ。...でもさ、それって
 紗季が自分が傷つくのが怖いから、翼君
 に逃げてるってことになるよ。」


『夢、ごめん。今はよくわからないんだ。』


私は、そう言い残して、この日は早退した。





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