ボレロ - 第一楽章 -
「さっきの話だけど、岡崎をどうするつもりなの?」
「珠貴だったらどうする」
私のシガレットケースから一本抜き取ると、煙草の先を合わせてきた。
口元をゆるく開け、細い煙が噴出される。
煙草の先を少し灰にしただけで灰皿に置き、私の問いによどみない答えが返ってきた。
珠貴の知る情報と、その分析力には、いつも目を見張るものがあった。
彼女なら一緒に戦っていける。
答えを聞きながら、その思いをまた強くした。
「答えたわよ。これでどお? また試してるんでしょう。
コイツは自分とやっていけるのかって、宗はいつになったら私を対等に見てくれるの?」
「試してなんかいない。珠貴は俺が唯一認めた相手だ、今更何を言ってる」
「これほどガードが固い男性を見たことがないわ」
「お互い様だろう」
「そうかしら……宗のメガネのない顔を何人の女の人が見たのかしら。きっとそう多くないわね」
「ベッドのあとで、珠貴が煙草を吸うのを見た男の数と変わらないさ」
「まぁ、憎らしいことを言うのね」
ベッドヘッドに背を預け、胸を隠しもせず露わにしたままの珠貴を引寄せた。
仄かに煙草の苦味がする舌は、たまにしか味わえない極上のデザートの味がした。