俺は先輩に夢チュー
って、そうではなくて。
「なら、覚えててください。荷物は男が持つもんなんです。だから、それ貸して?」
手を差し出すと、躊躇いがちに荷物を渡してきた。
まだ納得していないような顔だけど、俺は譲る気はない。
それからは、あんまり喋ることもなかった。
怒ったのかと思ってセンパイの方を見ると、センパイは舟をこいでいた。
………さっきの、結構重たかったな。
「センパイ、眠いなら俺に寄りかかっていいよ。着いたら起こすから」
静かにそう言うと「ん……」と言って俺に肩に頭を乗せてきた。
その重みに、幸福感が募る。
「………まこと」
「ん? なんですか? センパイ」
小声で先輩が俺の名前を呼ぶ。
斜め上からセンパイの様子をうかがうと、もう瞼が下がっていた。
寝言? でも何で俺の名前?
そんな事言ったら、俺調子に乗っちゃいますよ?
そう思っていたら、小さくセンパイが呟く。
「ありがと………」
………………………あーもう/////
一体この人は何回俺の心臓を壊すつもりなんだろう。
頭を寄せると、鼻孔をくすぐる甘い匂いがする。
香水をつけてるわけじゃないのに、香ってくる。
俺、こんなに幸せでいいのかなぁ~。
「これでカレカノになれたら、俺死んでもいいかも」
まぁ、そんな事は多分有り得ない。
この人の目が、心が、俺を捉えることは、万に一つの可能性もないと思う。
「センパイ、俺だけを見てはくれませんか?」
俺の声は、電車の音にかき消された。