恋人ごっこ
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「一目惚れは信じられない?」


「そんなことない、ないけど」


「けど?」


聞き返されて、あたしは口を閉じた。
「だって」とか「けど」と言って逃げてしまうのは、これ以上を知るのが怖いから。
今でさえ脳内がパンクしそうなのに。


「わかんない、わかんないよ仙崎」


涙が出てきた。
彼とさよならした時だって、泣かなかったのに。
悲しい涙なのか、それとも嬉しい涙なのか。
そんなあたしを見て、彼は一瞬驚いたようだったが、ふっと笑った。


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