恋人ごっこ
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「んむー…」


変なうめき声を上げながら、彼はベットの上で身をよじった。


「あ、おはよ」


あたしはそれに気づき、もう夕方なのにそう挨拶した。
ゆっくり開かれた彼の目は、髪と同じ、濃い焦茶色だった。


「…ここ……」


「あたしん家。君が道路に落ちてたから一応拾っといたんだけど、大丈夫?」


結局新居者らしき人は来ておらず、とりあえず彼を部屋に運ぶことに専念していた。
そう説明すると、彼は上半身を起こして上下左右に目を向け、最後にあたしと目が合った。



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