恋人ごっこ
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「もしかして…」


あたしはじっと彼の顔を見る。
そこには、苦笑いを浮かべる仙崎。
それは確信に変わった。


「…迷ってたの?」


「はい…。」


うつ向きながらそう言う彼に、あたしは左手を顔にあててため息をついた。
週末、引越しの手伝いしててすっかり忘れていた。
こいつの、極度の方向音痴を。


「…うちから学校まで30分かからないはずなんだけど。」


「や、間違えて電車乗っちゃって…」


「電車…乗らなくても来れる距離なんですけど。」


「…はい、すいません……」


迷子にもほどがあるよ仙崎。
駅に行けるなら、何故駅より近い学校にこれないの。


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