恋人ごっこ
.



「誰だよお前」


突然の仙崎の出現で停止していた滝本君は、少し声を低くしながら尋ねた。
仙崎の腕の中にいるから表情はわからないが、多分いらついてる。


「あ、一年の仙崎です」


仙崎は律儀に挨拶した。


「先輩あれですよね、雑誌のモデルさんでしょ?
何回か見たことある。」


「え…ありがとう。」


滝本君は自分を知っていたことが嬉しかったらしく、お礼を言った。
てかなんでモデルの話題?


「でも先輩。」


「っ」


あたしの背中に回ってる仙崎の腕に、少しだけ力が入る。
顔が仙崎の胸板に押し付けられて、苦しい。




「自分のプライド守るための執着って、かっこ悪いですよ。」



.
< 33 / 122 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop