恋人ごっこ
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「…仙崎、君にいいことを教えてあげよう。」


「はい?」


「人間何も食べなくてもね、気力で乗り越えられるんだよ。」


「なに馬鹿なこと言ってんですか。」


ふざけてちょっとかっこよく言ってみたつもりだったが、彼に一蹴されてしまった。
結構本気で言ったのに。


「とにかくいいの。はいこの話お終い!ほら教室戻るよ」


あたしは早々とカロリーメイトを口の中に押し込み、立ち上がって校舎の方を向いた。


「っ、」


瞬間、歪む世界。
ぐらりと世界が揺れた。
直後、何かがあたしを支えた。

ああ、違う。

世界が揺れたんじゃなくて、あたしが揺れたんだ。


「だから言ったのに…」


記憶が朦朧とする中、そんな声が聞こえた気がした。



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