恋人ごっこ
.




「…―じゃあそういうことで。」


「気をつけてね」


…何か聞こえる。
目を開けるのが億劫で、横になったままあたしはそう感じた。
誰が何を話しているのかわからなくて、うっすらとだけ目を開けてみる。
すると視界に入ったのは―、


「…仙崎?」


口を動かすだけの形で、彼の名前を呼んだ。
相手には聞こえてないらしい。


「っしょ。」


そんな彼の掛け声と共に、体が浮いた気がした。
仙崎が近いことに、数秒して気づく。


「…うわ、せ、仙崎」


「あれ、和葉さん起きたの?
おはようございます。」


「お、おはようじゃなくて!離して!!」


軽く挨拶する仙崎に、あたしは慌てて叫んだ。


.
< 41 / 122 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop