恋人ごっこ
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「和葉さん」


背後からあたしを呼ぶ声。
直後、由梨が「あ」とかちょっと反応した。
誰かなんて振り返らずともわかる。


「和葉さん、今日ー…」


「寄るな」


「うわぁっ?!」


あたしの肩に手が触れた瞬間、あたしは振り向きざまにフォークを突き出した。
相手は悲鳴をあげながらも、間一髪で避けた。


「ちっ、外したか。」


「か、か、和葉さん?!」


「黙れ。大人しくフォークの餌食になれ。」


「嫌ですよ!」


構え直すあたしから、すかさずフォークを取り上げる彼、仙崎。
くそぅ。


「やほー仙崎君」


「由梨先輩こんにちわ」


呑気に挨拶しあう二人に、あたしはガクリと肩を落とした。


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