恋人ごっこ
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「和葉ちゃーん!」


あたしを見つけた途端、ママはあたしに抱きついてきた。
そしてそのまま頬にキスをしてくる。
が、別に気にしない。いつものことだ。


「おかえり。今回は半年もどこにいたのさ。」


「ただいまー。
今回はね、パリと日本を行ったり来たりしてたの。
ほとんどホテル住まいだったわ」


そして、「人肌が恋しくて」とか言いながら、あたしに抱きつき続ける。


「わかったから離して」


「えーっ、和葉ちゃん冷たーい」


「…あの」


よくわからない絡みをしていると、仙崎が右手を上げながら割り込んできた。


「あ、ごめん。忘れてた。」


「忘れないでくださいよ酷いなぁ…。
で、和葉さん、説明がほしいです」


「説明…。」


あたしは呟きながら、あたしに抱きついたまま不思議そうに彼を見るママを見る。


「これ、あたしのママ。」


「こんばんわー」


「や、もっと詳しい説明をください。」


鋭い指摘が彼から飛んだ。


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