恋人ごっこ
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「…先輩、仙崎君のこと大好きなんですね。」


「……え?」


不意に呟くように言われた言葉に、聞き返す。

あたしが、仙崎を…好き?

契約書のない契約で、小さい子がごっこ遊びをするような関係なのに?

なのに、あたしは仙崎が、好き?



「…秋川先輩……?」


名前を呼ばれ、慌てて前を向く。
目の前の彼女たちは、不思議そうにあたしを見ていた。


「あ、その……ごめん、もう帰らなきゃ。」


髪をかき上げながら、あたしはそれだけ口にした。


「ごめんね、君たちの思い通りになってあげられなくて。」


謝って、あたしは留めようとする彼女たちをかわして走った。


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