恋人ごっこ
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「…ここまで歩きで?電車乗った?」


「乗ってませんよ。
だって前、和葉さんが電車乗らずに学校行けるって言ったから、ずっと歩いてて…。」


「で、なんでアパートと反対方向に来てるの。」


「…さぁ?」


「…」


馬鹿だこいつ。
あたしは心の中で呟いた。
それをあたしの目で察したのか、彼は慌て始める。


「や、でも最終的に和葉さんに会えたわけだし、これで無事帰れるし、」


「はいはい、ちゃんとナビしてあげるから。ほら行くよ」


あたしは適当にうけ流しながら、彼をおいて歩き始める。
あたしは結局何に悩んでいたんだろう。
由梨、こいつのせいであたしが変わるなんてありえないよ。


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