恋人ごっこ

09.フラクタルに沈む

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■ フラクタルに沈む








世界が色を変えたように見えた。
くすんで見えるあたしがいた。








ああ、なんて苦しい。


「和葉、和葉、かーずはーっ」


あたしの名前を連呼し、抱きつく。


「うるさい由梨。」


あたしは座ったまま、彼女の頭を手探りで叩いた。
彼女は、昨日あたしが電話してからご機嫌だ。


「だぁって、昨日の和葉可愛かったんだもん。
"これって恋?ねぇ恋愛?"って焦りながら聞いてくぶっ」


「恥ずかしいから言葉にして言うな。」


あたしは完璧に由梨の顔を捉え、思いきり平手を食らわせながら言った。


「いったー…いいじゃん浮かれても。
てかなんで本人は浮かれないわけ?」


「どこでどう浮かれろって言うの。」


あたしから離れてうめきながら言う彼女に、振り返って尋ねる。
鼻の頭が赤くなってる由梨を、少しだけ笑ってしまった。


「はぁ…まぁいいよ、和葉は恋愛初心者だしね。
意識して自覚しただけ進歩だもんね。」


ため息を吐く彼女に、あたしもため息を吐いた。



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