ハートの包帯

奥のハート



左肩から左胸のあたりまでに、
弧を描くようにのびた一本の線。


「心臓に刺さったりしなくてよかった」と、
ニュースが「軽い切り傷」と報じた私の傷。


2分もない一回きりのニュースで世間の人の耳を通り過ぎて、
あっという間に、溢れ出るような話題の中に埋もれた「小さな事件」。



鏡に写った自分の体を見て「汚い、」と、


無意識にすぐ隠してしまう私の「傷」は、
医者曰わく「完全に塞がっている」らしいけれど


「もう忘れた忘れた、」


言い聞かせるように呟いた、
いつもの言葉はまた震えていて


「傷」は悪化していくみたいだ。




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