ハートの包帯
「あ、あれ、姫じゃない?」
「おい見ろよ、姫いるぞ。」
「え、姫ちゃんどこ?超見たいっ!」
みんなと同じように膝上5㎝までスカートを短くして、
みんなと同じようにシャツのボタンを2つあけて、
みんなと同じようなマフラーを首に巻き付けて、
今日も朝から学校に向かう。
家から一番近い公立高校、という以外にこの学校を選んだ理由はなかったから、
毎朝ここまでくる目的は、高校卒業の資格をとるためだけ。
進級と卒業に必要なだけ単位をとれば、
それ以上のことは、何もしない。
欲がなくなったわけじゃない。
自分はわがままで自分勝手な人間だと思ってる。
だけど、たった一度、
喪失感というのを体感してから、
何かを求めることに、
恐怖を覚えた。