ハートの包帯
「姫、やっぱ色白ーい、うらやまぁ。」
「やばーい姫、足キレー。」
「姫、誘いすぎだろ〜。」
気にしない、気にしない。
「ねぇねぇ聞いた?
姫、入学してから今までで20人斬りだってさ・・・」
「友達が見たらしいんだけどさ、
昨日の夜、姫が男と街でラブホ入っていったんだってよ。」
「噂なんだけど姫、担任の次は、体育科の島田まで誘惑したんだって・・・」
気にしない、気にしない。
登下校中に四方八方から聞こえる、根も葉もない噂。
4月にここへ入学してもう9ヵ月が経つけれど、
私の周りで増えるのは、
友達の数じゃなくて、
こういうわけの分からない噂、新しい『姫の遊び人エピソード』。
学校へ続く小さな坂道を登る。
両脇に並ぶ木々はみんな、
葉っぱ1つ身につけていない。
「丸聞こえなんだけどなぁ・・・」
学校に友達のいない私に話し掛ける相手がいるはずもなく。
「まぁ、いっか・・・」
無意識に、
足元の石ころを追いかける。
前よりも、
他人と目を合わせるのが、
苦手になったかも。