ハートの包帯


それなりに授業を聞いて、
ところどころ居眠りして、
休み時間は本を読んで、
昼休みは、本を読む。


「姫、ご飯食べないからそんなガリガリなんだよ〜。
お腹、空かないの?いいなぁ〜。」

同じクラスの女の子が時々声をかけてくれるんだけど、

「あ、うん。」

私の返事はたぶん、聞こえてないな。

彼女は笑顔で言うだけ言って、
私と会話したかったのではなかったらしく、すぐに自分のグループの方に向き直ってしまった。


ここでちょっと会話を盛り上げられるような返事が出来れば友達も少しはできたはずなんだけれど、

「ん〜・・・・」


人見知りが絶好調で、
よく聞こえるのは


『姫はなんだか近寄り難い。』
『姫は壁作ってる感じがする。』


そんなことないんだけどなぁ。

ただ、
だからといって自分から話しかけて仲良くしたいな、
とまでは思わなくって、
また本に目を落とす。


本には、現実に本当にあるんだろうかと思うような夢や体験や場所や人や感情がいっぱいで、

私の小さな世界はここから広がってるような気がする。


今日は、この物語の中で
主人公の女の子が、
純粋に一生懸命恋をしていて、

私はなんだか自分では言葉に出来ないような気持ちになった。


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