ファム・ファタール~運命の女~


卒業してなお、週末に彼氏に連れられてやってくる母校の図書館。

最近の彼は、試験勉強の場所にここを利用している。

勉強を始めてしまうと、私の存在も忘れて数時間放置なんて、毎回のこと。



そして、在学中と同じように私はここへやってくる。



優艶に微笑んで、大きくて男の人にしては綺麗な手を差し出す。


差し出された手に、迷わず手を重ねると、強い力で引き寄せられて、植え込みの淵に軽く腰掛ける彼の膝の間に立たされる。

途端に、甘く香ばしいタバコの香りに包まれる。



「さぁ、どっちだと思いますか?」



急に詰まった距離感に高鳴る胸を抑えて、わざと素っ気ない返事を返す。



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