カノン




勇気を振り絞って言ったのだけれど、

電話の向こうで景さんが黙り込んでしまったから、

言い知れぬ不安で いっぱい に なった。




ばくばく と、五月蠅い音を立てる心臓を落ち着かせるように、

胸を とんとん と、叩く。




すると あたしの緊張が伝わったのか、

次の瞬間 景さんが、慌てて あたしを安心させるかの ように、口を開いた。






「…そっか、

それは ちょうど良かった!


俺も、リアちゃんに渡したい物あって…

…会いたいと思ってたんだ 笑」




「そ、そうなんですか…?」






「…うん。


でも なかなかリアちゃんの住んでるとこ、

ツアー以外で行く機会なくて…。


ここんとこ、休みも無いし…」




申し訳なさそう に、景さんが言った。


どうやら景さんは、あたしを東京へ来させるのではなく、

自分が出向くつもり…のよう だった。




………でも それは もう、

完全に遅いので御座います。笑






「あ、いえ…あたし、


もう、東京に来てますから」




「………へ……?」





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