カノン




「…………リアちゃん。


ホテルは まだ、1日分しか予約してないんだよね…?」




暫く沈黙してた景さんが、ようやく静かに口を開いた。






「…は、はい」




「じゃあ今夜1晩 泊まるのは しょーがない として…」






「………」




「……明日んなったら、家に帰りなさい。


仕事も、

次の日から ちゃんと行って」






冷たく突き放すような その言い方に、

思わず怯みそうに なる。




でも、ここで景さんに会わずに帰ってしまったら、

何の為に今 此処に居るのか、分からない。




ここで帰ってしまったら……。








「で、でも あたし…!


景さんに会うまでは、帰れないんです」




何とか しよう と、言葉を続けた。






「……どういう事?」




それに対して鬼気 迫るものが伝わったのか、

幸い景さんは強行的に電話を切る事も なく、

あたしに理由を話すチャンスを、与えてくれた。





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