カノン
「…あーあ、
こんなに なるまで、飲んじゃって…笑」
トイレの ありそうな方向に向かって歩いていたら、
誰かに腕を掴まれた。
「…!?
…景、さん…!?」
「…ほら。
とりあえず ここで良いから、座って。
頭、すげー くらくら してる、でしょ」
近くの、廊下の陰にあった椅子に あたしを座らせると、
景さんは自分も腰を落として、目線を合わせた。
「………」
「…少し水でも飲むか…。
水 持って来るから、ここで待ってて。
…動いちゃ、駄目だよ。
どんな人が来ても、絶対 付いてっちゃ、ダメ 笑」
「………」
そう言って、あたしの頭を ぽんぽん と 撫でると、行ってしまった。
…さっきの冷たい視線が嘘みたいに、
なぜか今の景さんの空気は、あたたかい。
―景さん って、
本当は、こういう人…なの…?―
それとも、
逆…?
雑誌で見ている景さんは、確かに ずっと怖いイメージだったけれど…。