カノン
「……こんな事 言ったら、
思い上がってるみたいで気が引けるんですが…
景さんとは、
初めて会った時から…初めて会った気が、しないんです」
話が途切れた時、そう切り出したら、
景さんは目を見開いた。
「考え方が似てるって いうのは…
前お手紙に書かせて頂きましたよね?
でも あの後やっぱり信じるのが怖くなったり色々あったんですけど…
でも今日、
改めて景さんの お話を色々 聞かせて貰ったら……
やっぱり…、
そう、思いました」
「………」
「…あ、
って、完全に思い上がった発言ですよね!
……ごめんなさい!
やっぱ今のは忘れてくださいっ」
「………」
喋り続ける あたしとは反対に、
景さんは ただ、黙って居た。
って言うか、あたしってば…
どうして、こんな事 言っちゃったんだろう…。
急に こんな事 言い出されたら景さんが困るって事ぐらい、
ちょっと考えれば、分かった筈なのに……。
「………」
反省と後悔で、今度は あたしが黙り込む。
景さんは何か考えるように宙を見つめてから…、
ゆっくり、口を開いた。
「……俺とリアちゃんは間違いなく、この前が初対面だったけど…
でもリアちゃんが そんな風に思う って事は、
もしかしたら俺達…
ホントに どこか似てるのかも、しれないね」
そう言って あたしを見た景さんは、
何だか すごく……消えてしまいそうに、儚げ だった。
″似てるのかも しれない″って、
普通に考えたら、景さんの存在を近くに感じられるような言葉の筈なのに、
なぜか、景さんの存在が もっと ずっと遠くなってしまう ような…気が、した。
話している内容と雰囲気が一致しないような…そんな不思議な景さんの様子に、
あたしは一瞬 違和感を覚えたけれど…、
景さんが次の言葉を続けようと していたから、何も言わずに、耳を傾けた。