カノン
「リアちゃん…?
…あ、ちょっと失礼します」
その時 突然、サナギさんの携帯が鳴った。
サナギさんは そのまま車の中で、
あたしの方から少し離れるようにして、電話に出た。
「もしもし?
…えーっと
今、ホテルに着いた所ですよ。
あー…でも、……
リアちゃん、降りたくない みたいで…」
そこでサナギさんが言おうか どうしようか、迷うような目で
ちらっ と あたしを、見た。
電話の向こうの声は聞こえて来なかった けれど、
きっと相手は景さん なのだろう と、思った。
「…いえ、具合 悪い訳では ないみたい なんですが…。
…ええ、……はい
はい、……」
それからサナギさんは、
電話の相手の声に聞き入るように頷きながら、返事していた。
「………え、私ですか…?
はい…、分かりました。
ええ、大丈夫ですよ。
任せてください……はい、それでは」
暫くして、その言葉を最後に電話を切ったサナギさんは、
体を また あたしの方に向けて、言った。
「…すみません、話し込んでしまいまして…」
「いえ!
とんでもない です!!
あの……?」
「あ、ああ
薄々 感付いてらっしゃるかも ですが…(笑)、
今の電話、景から です。
リアちゃんの事、よっぽど心配みたいで…。
…あと、私の事も、よっぽど信用 出来ないみたいで 笑」
そう言うと、サナギさんは冗談めかすように、笑った。