ｶﾉﾝ

…ｻﾅｷﾞさんの事も、景さんの事も、

疑う自分では、居たくない。


それに何もかもが似てるって思っている景さんと、

他のﾌｧﾝの子では有り得ないような関係で居られたのも、ﾄﾞﾗﾏﾁｯｸな…いい話だと、思う。




でも いつも、

最後の最後で″騙されてるんじゃないか″って思って、逃げたくなるのは…

信じるよりも、疑う方が何倍も楽だって分かった上で1歩が踏み込めないのは…


″怖い″んだと、思う。


…ただ、単純に。




全てが嘘だった時に、何にも無くなって…

それに耐えられない自分が居て…。


どんなに強がりを言ったって、

あたしは″弱いんだ″って思い知らされて…。


そして景さんを想えば想った分だけ…、

傷付くのが……怖い。








東京に来る時に、

何もかも捨てるつもりで、景さんにも嫌われても いい って位の覚悟で来た筈なのに、

ここに来て…また心が、揺れる。




あたしは まだ何も言えずに、

ただ黙ってｻﾅｷﾞさんを…見ていた。