カノン




―…










「…サナ。


……さんきゅ」




小声で そう言うと、サナは声に出さずに にっ と 笑って、

車を発進させた。






すぐ側で、唖然とした表情で その車の後ろ姿を見送っていた君は、

車が完全に見えなく なってからも、なかなか こっちを振り返ろうとは しなかった。






「……リアちゃん」




不安に なって、その名前を小さく呼んだ時、

ようやく君は、躊躇いがちに俺の方を振り返った。






「ヒカリさん…」






「……とりあえず、

どっか入ろっか 笑」





< 143 / 275 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop