カノン
"…ほんと ごめん。
俺 今から家に帰んなきゃ いけなくて…"
個室に戻って、君に そう告げよう と したら、
君が気持ち良さそうに眠っている姿が目に入って、慌てて口を噤んだ。
……緊張、してたのかな。
さっきは
"一緒に居ると安らぐ"みたいな事 言ってくれてたけど…。
…あ、だから
眠くなっちゃったのか…(笑)。
そう思い当たって、思わず口元が緩んだ。
すやすや と 寝息を立てる君の側を離れるのが名残 惜しくて、
暫く君を、見つめる。
普段から可愛い君だけど、
寝ている姿も長い睫毛が影を落として、まるで芸術品みたいに綺麗だった。
目を開いている時には恥ずかしくて とても見る事が出来ないような至近距離から君を眺めて、
その さらさら した髪に そっ と 触れてみても、
君が目を覚ます気配は一向に、ない。
…もしかして、このままキスしても起きない かな…。
白い、陶磁のような肌に触れて、
君が起きないのを確認して…、口づけた。
君は どんな夢を見ているのか…
その顔に柔らかな笑みを、湛えていた。
「何で、君は…」
たくさんのバンドが居る中で、俺を見つけてくれたんだろう…。
何で…、俺を選んでくれたんだろう。
…それは"必然"だったと、
今は まだ、そう思っていたい。