カノン




『…あ、ちょうど いい所に…!』




『……何?』






『お腹 空いたから、何か食べに行こうと思ってたの。


ねぇ、一緒に行こうよーー』




『今日は……もう、いいの?


…ここで食べてかなくて』




病室を指して言うと、君は困ったように眉毛を下げて…静かに こくん と、頷いた。


そして、




『…ねぇ、何 食べたいー?


あのね、りぃは~…』




と、慌てて気持ちを切り替えるように、明るい調子で、そう続ける。




君が そう言う時は…、

大抵 "あの人"に、冷たくされたか…"あの人"の調子が悪い時で。


…心が傷付いている。


分かるよ、そんな事くらい。








『……あ』




その時、

突然 病室から"あの人"が出て来て…、君は驚いたように目を瞠った。






『"かず兄"…』





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