カノン
―…
「……最低…」
あたしは分かり切ってる事を、もう1度 呟いた。
方向音痴の癖に、感情の赴くままに走り出したから、
どうやって ここまで来たのかも分からないし、
ホテルまで どう行ったらいいのかも、当然 分からない。
いつもだったら交番で訊くんだけど…、
生憎 交番は見当たらないし、
道 行く人に訊いても、東京の人は答えてくれるのか、激しく不安。
ホテルに電話して場所を教えて貰いたいけど、
自分が今 居る場所が分からないんじゃ、訊いても意味ないし…。
それに こんな遅い時間に電話を掛ける勇気も、ない。
―とりあえず、駅に行けば何とかなる、かな…?―
…そう思って、
がんがん する頭を押さえながら、再び歩き出した。