カノン
-10
リビングに戻ろう と すると、ドアの向こうからサナの話し声が聴こえた。
"まさか"と思って、慌ててドアを開けると
案の定、サナは俺の電話で誰かと話していた。
「………サナ。
お前…人の電話で、何やってんだよ」
思わず、声に出た言葉を聞いて、サナは振り返った。
「す、すみません~!
…でも景さん、
あんま怒んない方が いいですよぉ~…電話の相手、リアちゃん なんでw
そんな声 出したら、
リアちゃんが、怖がっちゃいますよ?
…景さんの その声、
結構 迫力、あるんだから。
…あ、じゃあリアちゃん、
景が戻って来たので、電話 代わりますね。
……それではっ」
そして一気に そう捲し立てると、
電話を俺に押し付けて、逃げるようにリビングを出て行ってしまった。
「………」
いざ電話を渡されると、
今のマネージャーの不審な行動を責める気持ちよりも、
電話の向こうの君の反応を気にする気持ちの方が、大きい。
…確かに、サナの言う通り
あの声のトーンは怒ってるみたいに聞こえるから
君に聞かれたら、怖がられる だろうな…。
嫌われるのが怖くて、なかなか口を開けない。
君は…
昔から理不尽に苛められたり怒られたり してたから、
そういうの、異常に怖がるんだ…。