カノン




君は どんな状態で あっても他人を否定する事が無いから、

もしかしたら、俺の台詞は間違っていたかも しれない。


でも、例え不正解で あれ、

君が家に来てくれる って いうのは、単純に嬉しかった。


君は断らない人だけど、

でも もしかしたら断られるかも しれない って、内心は めっちゃ不安だったから…


…完全に浮かれてた。




君に家までの道を説明して、

方向音痴なのに、なぜか君が自信満々に"分かりました~"って返事した事にも、

何の疑問も抱かなかった。


もう…完全に、浮かれてた。




本当は君は、自分で方向音痴って事を自覚しているから、

道の事では、自信満々に返事は しない。


必ず"多分 大丈夫"とか"多分 分かると思う"って、言う。


"分かった"って言い切ったって事は、

その時は、道の事を考えてなかった って、事。


記憶力は良いから、

俺の言った道順を"文章"として、覚えてる。


それを思い出しながら来れば、

道の事を考えていなくても、大体 目的地に着ける。


普段は一生懸命 人の話を聞いて、頭の中で自分の地図を思い浮かべるから、

話と地図が結び付かなくて、全然 自信が持てない。




でも、人の話を一生懸命 聞いていなければ…

俺の話を文章として流して聞いていれば…。




だから君は あの時、

道の事じゃなくて、違う事を考えてた。


…上の空、だったんだ。





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