カノン
「…ねぇ、お姉さん!」
「!?」
…不意に声を掛けられ、振り向いて…しまった。
普段は携帯 見る振りとかして、
気付かない体を装いながら かわせる…んだけど。
きょろきょろ上を見てた所為で、
…捕まってしまった。
「お姉さん、どこ行くの?」
「えき……いや、この辺で友達と待ち合わせを してまして!」
「…って、
最初に″駅″って言っちゃってるじゃん!笑
お姉さん、面白いね~笑
駅だったら此処から近いから、一緒に行って あげるよ!」
「いえ、結構ですー!!」
…腕を掴まれる前に、また本気のダッシュ。
これで ますます、どこに向かってるのか、分からなくなった。
でも立ち止まって きょろきょろ してたら、
また声 掛けられそうだし、
とりあえず、何もない振り して、歩き続けた方が いいかな…。
「東京……、やっぱ怖い…」
夜だし1人だし、泣きそう に なってきた。
″暗い″って意味では、地元の夜の方が怖いけど、
でも やっぱり、いくら明るくても、
この東京 独特の殺伐とした空気は、怖い。
…電話、掛けたいけど…。
―自分の居る場所も分かってないのに、
それは やっぱり、迷惑だよね…―