カノン
「…で、何の用だよ。
家の前で待ってる とか…
マジ、迷惑なんだけど」
玄関のドアを開け、中に1歩 入ると、
その場で、不機嫌さを隠さず、ストレートに言う。
「えー、いいじゃん!
…あっ そうだ、
合鍵くれたら、ちゃんと中で待ってるし!」
「そーゆー問題じゃねーし、
…はぁ。
マジありえねー…」
楓の図々しさに、自然と溜め息が漏れた。
「ねぇヒカリ、怒んないでぇ~」
そんな俺に、媚を売るように
馴れ馴れしく、楓が首に腕を巻き付けて来る。
……こーゆーの、嫌い。
吐き気が、する。
「……」
無言で それを振り払うと、
今度は少しヒステリックに、怒鳴られた。
「そんな事して、いいの!?
アタシが ちょっと言えば、
バンギャ(ヴィジュアル系バンドの女性ファン"バンド ギャルズ"の略。バンギャルとも略される)が、すぐ広めてくれるよ!
『今、SIVAのヒカリの家に連れ込まれたぁ~』って!!」
そう言いながら、携帯を取り出す。
―何する気だろう…?―
そう考えた時には既に、
カシャッ というシャッター音が、聞こえていた。