カノン




「…ねぇ、何で黙ってるの?


黙ってる って事は、やっぱ女なんだ…。


そう なんでしょ!?


何とか言いなさいよっ!!」




"その妄想癖は何なんだ…"と、呆れて溜め息しか出て来ないのを良い事に、

楓は喚き続ける。




俺は ついに我慢 出来なくなって、

玄関のドアを、開けた。






「…いい加減に しろよ。




お前みたいな奴と一緒に居るとこ見られるのが嫌で、

とりあえず玄関に入れたの、分かんない?




これ以上お前の話 聞いてたら、頭おかしく なる。


…出てけ」




「ヒカリっ…!」








「ヒカリさん……?」






ドアを開けて楓を追い出そうと したら、

ちょうどエレベーターから降りたサナが、家に向かって来るところ だった。


目が合うと、サナは驚いたような顔で楓と俺を交互に見て、

続けて"どうしたんですか"とでも言うように、俺の名前を呼んだ。






「…サナ、わりー。


もう、約束の時間?」




とっさに そう言うと、

サナは こっちに向かって歩きながら、




「…約束…。


あー…、すみません。


ちょっと早かったですかね?」




と、困ったように眉毛を下げた。





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