カノン




「景さん…、どうして ここに…?」




目の前に景さんが居る事が、どうしても信じられなくて、

絞り出すようにして、声を出した。


景さんは少し思案するように、

ゆっくり と 口を開いた。






「うーん…


…虫が、知らせた。


でも まさか ほんとに見つかるとは、

俺も思ってなかった 笑」






東京へ出て来る度に、街で ばったり咲くんに出会えないかなぁ って思いながら歩いていたけれど、

1度も出会った事なんて なかったから、

この たくさんの人の中 景さんが あたしを見つけてくれたのは、

本当に奇跡だった、かもしれない。




さっきまでは色々 覚悟してたけど…、




「……見つけてくれたのが景さんで、

本当に よかったです…」




心からの、本音が漏れた。




景さんは ずっと雑誌の中の人で…今日も初対面。


でも今 景さんを見たら、

涙が出そうに なるくらい、安心した。




景さんは癖なのか、

困ったように笑うと、


「送ってくから、ホテルの名前 教えて」


…と、短く言った。





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