カノン
心の中で ぶつぶつ文句を言っていると、楓が突然 俺の腕を引っ張って止めた。
「ねぇ、ヒカリぃ~
この お店 入りたいんだけど!」
「……入れば?」
「1人で じゃないよ!
ヒカリと一緒に入りたいの~」
「……何で」
「だってー、
ヒカリと一緒に居たら、注目の的じゃん!
やっぱぁ、皆から格好 良い彼氏 連れてる って、思われたいじゃん?」
「……何、その理由」
…それって つまり……。
「…"ステータスが欲しい"って事?」
思い切り不機嫌さを前面に押し出して言ったつもり だったけど、
ヤツには何にも響いてないみたい だった。
「…そ♡
羨ましがられたいんだよね。
ヒカリも そうでしょ?」
―…いや、全然 違うから。
お前と一緒に すんなよ。
…と、思わず出そうに なったけど、引っ込めた。
とにかく こいつと話すの、面倒 臭い。
「もう、仕事 行くから。
…仕事先まで 付いて来んなよ」
大体 仕事 行く前だって、1人が良かったんだ けど。
いつの間にか、付いて来て、
すっかり楓のペースに巻き込まれてる。