カノン




景さんは東京に住んで居るらしく、

当然 東京のホテルに泊まる事は無いみたいだった けれど、

あたしが言ったホテルの名前と携帯の地図を見て、

見覚えのある場所まで、連れて来てくれた。






「…あ!


此処からなら、分かります!


景さん…、

本っ当に、ありがとうございました…!!


もう、何て お礼を言ったら良いか……(泣)」




「はは、泣くな って 笑


…明日、気を付けて帰ってね。


それから、

…お大事に」






「あ、ありがとうございます…!!」




「だから、泣くなって!笑




…そうだ、

明日もし どうしても帰り道が分からなくなったら…、

ここに電話して」




景さんは柔らかな笑顔で そう言うと、

紙に番号を書いて、渡してくれた。






「………」




―…これは景さんの番号ですか…?―




この流れだから…

もしかしたら そう、かもしれない。


…でも もしかしたら、

道を教えてくれそうな他の人の番号、とか……?






「でも ま、

出来るだけ掛かって来ない事を、願ってるけどね 笑」




有り得ない想像を していると、

携帯を持った手を ひらひら振りながら、

最初に自己紹介した時と同じ苦笑を浮かべて、

景さんが言った。


…その様子で、

景さんが躊躇いなく あたしに自分の連絡先を教えてくれたんだ って、分かった。






―これが本当に、″SIVAのヴォーカルの景″さん……?―




何もかもに反抗して唾を吐くような…

パブリック イメージとは、正反対。


…あたしが抱いていたイメージとは、まるで違う。





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