カノン
君が ずっと好きだった、"あの人"。
似ている所も あったけど、基本 俺とは正反対だった。
明るくて、いつも にこにこ笑ってて、
"話し掛け易いオーラ"が、出てる人。
…彼は…
何だか、うちのバンドのリーダーに似てる。
「こんにちわ~♪
また遊びに来ちゃいましたぁ♡♡
カエデさん、居ますぅ~?」
「……居ませんけど」
廊下で たまたま見つかってしまい、声を掛けられた。
不機嫌さ全開で返しても、彼女は さして気に ならない様で、
『じゃあ、また来ます~♡今度は いつ事務所に来るんですかぁ?』と、図々しく食い下がって来た。
「いや、スケジュール教えるとか…ホント無理なんで」
社長の友達(本人 曰く)らしいから、そこまで強く押し返す事も出来ないけど、
定評の無表情で そう言ったら、彼女は小さく舌打ちして帰って行った。
…てか、女の子が舌打ちとか、どうなの。
リーダーの事が好きなんだから、俺を好きに なる事なんて無いとは思うけど…、
でも万が一そんな事が あった と しても、こういう子だけは無理だわ。
そんな事を考えながら、遠ざかる派手目の後ろ姿を見送った。