カノン




―…






『……リア!!』




俺が駆け付けた時には、君の髪の毛は もう ぐちゃぐちゃ で。


顔にも擦り傷なのか切り傷なのか…所々 血が、滲んでた。






『…リア……!』




君が痛がる なんて事は考えずに、

ただ きつく きつく、抱き締めた。






『……遅れて、ごめん』




腕の中の君は小さく震えてて、

俺が来るまで ずっと1人で耐えてたんだ と 思ったら、胸が締め付けられそうに なった。






『…痛かったな』




君を解放して、顔の傷に そっ と 手を触れながら そう言うと、

君は慌てて ぶんぶん と 首を振って、俺から顔を背けるように目を逸らした。






『XXくん、何で……』




何でも良いから君の声が聞きたかったのに…

暫くして声を出したのは 君じゃなくて、

苛めていた奴等の中の1人だった。


俺が来た事が不思議だったらしく、震えた声で そう呟く。






『何でって…、

こいつを助けるのに理由いる?』




ゆっくり、君を背中に隠すように

声の主の方を振り返った。


それに対して声の主は一瞬 怯んだみたい だったけど、

その後に すぐに勢いを取り戻して言った。






『だ、だって…

この子は みんなの事 傷付けて、XXくんの事だって……!』




…傷付けたから、

何で そんな奴を助けようと するのか って、言いたいのか。




阿呆らしい、と

俺は溜め息を吐いた。





< 251 / 275 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop