カノン
03
「ヒカリくん、
これからでも いいから、戻って飲み直そうよ」
マナちゃんが景さんに腕を絡めたまま、
上目遣いで、言った。
景さんは また、
あたしの苦手な笑みを、浮かべた。
「んー…。
…まだ みんな居るの?
じゃ ちょっと挨拶だけして、帰るわ」
「え~っ!?
折角だから、飲んでこうよ!!
…みんな待ってるし!
マナも……、
もう ちょっとヒカリくんと お話してたいし…♡」
…マナちゃんが景さんに顔を近付けて…、
必殺技を出して来た。
「………」
…景さんは やっぱり、
満更でも なさそうに…見える。
「ひ、景さんっ!
あたしの所為で途中で出て来ちゃったから…、
今度は ゆっくり、飲んで来てくださいっ」
あたしは思わず、心にも ない事を…言った。
本当は…、
なぜか、景さんにマナちゃんの所に行って欲しくない、と…思った。