カノン
「…リアちゃん!
今度 一緒に、ライブ行こー♪」
久し振りに会った中学の同級生に、
帰り際、言われた。
「うん、いいよ~。
何のライブ行くの?」
「クラウドって言うヴィジュアル系バンドなんだけど…。
リアちゃん、知ってる??」
………知ってる。
そのバンドは、SIVAさんと同じ事務所の…
後輩バンドさんだ。
「……知ってるよ~♪
…って言うか聖良ちゃん、
V系 好き、だったんだね!」
動揺を悟られないように、言った。
聖良ちゃんは昔から、アニメとかゲームが好きで…、
声優さんのライブに行ってる って言うのは聞いてたから、
てっきり今も、声優さんのライブに誘ってくれたのか と、思った。
「うん!
好きなゲームの挿入歌をクラウドさんが歌っててね~、
そっからクラウドさんにハマったの♡♡」
「………そう、なんだ 笑」
基本あたしは、誘って貰ったら、断らないように している。
…でも。
何で、よりに よって
SIVAさんに関係の あるバンドさんのライブに、誘われてしまったんだろう…。
別にクラウドさんのライブに行ったから って、
何もない とは思うけれど…。
でも、
あたしは何故か、因縁めいた物を、感じた。
ずっとアニメが好きだった聖良ちゃんが、急にV系バンドにハマっていたのも、
それを このタイミングで知った事も、全ては偶然だったけれど…、
でも、もし今日 街で偶然 聖良ちゃんと会わなかったら…、
あたしは これから先も、クラウドさんのライブに行く事は、なかった。
クラウドさんのライブに行かなかったら、
″彼″に もう1度 会う事も、なかった。
全ては、偶然だった。
でも…、
あたしの運命も、そして恐らく彼の運命も、
この偶然によって、大きく…動き始めてしまった。