カノン
「………リアちゃん!?」
ライブ真っ只中に、こそこそ と 中腰で席まで戻ると、
隣の聖良ちゃんが気付いて、耳元に顔を近付けて言った。
「もう、リアちゃん どこ行ってたのぉー!?」
「あー…、ごめんね 笑」
ライブ中だから そんなに喋ってられない と 思って、
出来るだけ短い言葉で、笑って誤魔化した。
「…まぁ、話は後で ゆっくりね!」
聖良ちゃんもライブの続きが気になるらしく、
妙に圧力の ある言い方で それだけ言うと、
また前を向いて、ステージに熱視線を送り始めた。
釣られるように、
あたしも、ライトで鮮やかに彩られているステージに、目を向けた。
…それは すごく非現実的で、
まるで遠い世界の出来事を見ているみたいに、
ぼんやり と、見えた。