カノン
「………ヒカリさん」
「えっ!?」
「ほら、クラウドさんの事務所の先輩の…
SIVAさんのヴォーカルって、
ヒカリさん…だった よね?」
「う、うん…
そうだけど…?」
「今日、
この会場に、ヒカリさんが来てたんだって!
…さっき、話してるの聴こえちゃった!!」
気付いたら、
聖良ちゃんが、目を輝かせていた。
「そ、そう なんだ…」
動揺がバレないように、ドキドキしながら そう言うと、
聖良ちゃんは そのまま楽しそうに、続けた。
「大体アーティストの人って、ライブ始まってから来るらしいんだ けど、
ヒカリさん、かなり早い段階から来てたんだって~!
せっかく だから、あたしも見てみたかったなぁ…w」
「そ、そうだね…」
「…あ!
もしかしてリアちゃん、
SIVAさんに興味あるの?」
聖良ちゃんが目を輝かせたままで、言った。
「う、うん
興味って言うか…。
アルバム聴いてて…、
″曲は知ってる″って程度だけど…笑」
…少しだけ、嘘を吐いた。
でも聖良ちゃんは そんな事に気付く筈もなく、
笑って続けた。
「…そうなんだぁ~。
あたしも ちょっと、聴いてみたいかもw
良かったら、今度 音源 貸して~♪」
「うん、いいよ~」
あたしは、苦笑しつつ答えた。
あたしに言われたくないかも だけれど、
聖良ちゃんも結構ミーハーだから…、
曲 聴いて″SIVAさんのライブにも行く″って言い出したら どうしよう…
…って、ちょっと不安に なった。
あたしが何も知らなかったクラウドさんのFCライブに誘ってくれた位だから、
元々 曲を知ってるSIVAさんのライブだったら、
当然 聖良ちゃんが誘ってくれる確率は、高くなる。
″誰かと一緒にライブに行きたい″って思って、
それで あたしを誘ってくれるのは嬉しいのだけれど…、
ステージでもプライベートでも、
景さんを、見たくは…なかった。