カノン
07
景さんやSIVAさんに関わる物から離れて暫く経った頃、
たまたまルアンの咲くんが、セッション バンドで対バン イベントに出る事を知って、
久しぶりに東京に来た。
例えセッション バンドでも、
咲くんを観られたら、あの頃の気持ちを思い出せるような、気が…したから。
いつもだったら、会場とホテルの往復しかしない けれど、
気分転換したかったから、観光も兼ねて、あたしは いつもより多めに宿泊を予約した。
けれど…
ライブ当日の朝、
時間に余裕が あるから と、何気なく寄ったホテル近くのコンビニで、
今まで どんなに会いたいと思っても会えなかった咲くんにバッタリ、会った。
今 考えたら、この辺は会社みたいなビルが多かったから、
もしかしたら近くに、ルアンさんの事務所でも あったのかも…しれない。
でも出会った瞬間は、そんな事 思い付きも せず、
"運命の相手は、咲くんの方だったのかも…"なんて、
また懲りずに、″夢見がちで、痛い事″を、考えてしまった。
たまたま、同じ通りの商品を見よう と していた お客さんが居たから、
″邪魔して すみません″と謝って、避けよう と しただけ。
それも、旅行用の大きめの荷物を持っているから、
遠征先のコンビニでは、よく ある事だった。
今日は たまたま、その相手が
咲くんだった、って だけ…なのに。
「…………あ」
あたしの顔に見覚えが あるのか、
目が合うと、咲くんは小さく声を漏らした。
「え…??
あっ」
咲くんだ って事に気付いても、大声で叫ぶ訳にも行かず…、
あたしは そのまま、彼を見つめて固まった。