カノン
「あのー…、
…大丈夫…?」
心配そうに顔を覗き込みながら言う、
咲くんの声で、我に返った。
「…あっ、大丈夫です!!
すみません」
「……そう。
なら いいんだけど」
綺麗な笑顔で、咲くんが言った。
…でも…、
大好きだった咲くんの笑顔を見ても、
何故か もう、ルアンさんの追っ掛けを していた、昔のような気持ちには…ならなかった。
咲くんの笑顔は……凄く綺麗で、優し気で魅力的なのだけれど。
でも それは、
他のファンの人にも平等に向ける、″営業スマイル″なんだ って、
長い夢から覚めたみたいに、急に思った。